WR250R 試乗記 その3 - 泥沼日誌

2007年11月28日

WR250R 試乗記 その3

長々と引っ張りましたが、いよいよWR250Rをライディング。

メインスイッチをONに...普段キーの付いてないバイクばかり乗っているので、うまくキーが回せない。ステアリングロックの位置まで戻すと、押し込まないとキーが回らない?
ライトカウルとステアリングアッパーブラケット周りは、デジタルメータ採用のおかげか、とてもコンパクトにできている。ハンドルを振ってみても変な重さは感じない。
メインスイッチをONにすると、デジタルメータの表示テストとともに、各種アクチュエータの初期化、インジェクションの初期加圧(?)が行われる。時間にして2~3秒。表示が消えたことを確認して、スターターボタンを押す。ちょっと頼りなさげなセルの回転音の後、エンジン始動。

後のウッズラン強行テストでわかったことだが、メインスイッチを入れると、エンジンが止まっていても水温が上がっていればラジエータファンが回るし、ヘッドライトも点灯する。そのほかEXUPや吸気制御バルブ、インジェクションの燃料ポンプなど、電気を使う装置が満載なので、バッテリーの消耗が心配だ。始動方法がセルスターターのみなので、余計に心配になる。

走り出す前に、スロットルを低回転でジワジワと開けたり閉じたりして見たが、スロットル操作に対して素直にエンジンが反応する。いきなりパコッと全開にしてみても、FCRキャブを搭載したモトクロッサーのようにエンジンが息つきするようなことがない

そして宣言したとおりゆっくり発進し、回転を上げながら2速、3速と上げていく。2速から3速のギア比が離れているためか、ちょっと失速気味。駐車場の平らな部分だけでは6速までギアを上げることはできなかった。

駐車場エリアをすぎて、いよいよエンデューロコースへ。2速まで落として左の直角ターンを曲がる。スパイクタイヤを履いているせいか、全然滑らない。曲がってすぐに小さいジャンプ、3速に上げてジャンプの飛び出しにスロットルを合わせると、エンジンのつきが悪くてタイミングが狂い、ちょっとリアが引っかかってしまった。フロント・ロウで着地したが、サスペンションは全然問題ない。

そのあとのコースでは、1~4速しか使えなかったが、やはり3速以上はギア比が高すぎて走りにくい。林道ツーリングやエンデューロレースを走るなら、スプロケットを交換してギア比を低くした方が良いだろう。

コース中盤には、キャンバーターンや連続ジャンプ、きついS字コーナがある。普段この場所は、粒の粗い火山礫でとても走りにくいのだが、下が凍っているせいか路面が締まっていて、ものすごく走りやすい。スパイクタイヤの効果もあるだろう。
そこでちょっとペースを上げて、ジャンプを思いっ切り飛んでみる。安全を期してリアから着地。そんなに大きなジャンプではないけど、着地面が受けの斜面だったせいか、リアサスが底突きするのがわかった。レーサーでも変に着地すると底突きするところだから、トレールバイクとしては優秀な方かな。

その後に控えるS字コーナーはスタンディングのまま入ってみた。膝を入れてバイクを寝かせてみると素直にバンクする。ハンドリングは全く重たいという感じはしない。むしろ軽く感じるぐらいだ。ただ、両足の間に重たい物がぶら下がっているという感じがする。その割りにはギャップで振られたりせず、コーナーで寝かせたりの動作が軽く感じる。これがマスの集中の効果というものか。

コースの折り返しは、大きな180°ターンから連続S字の難しいセクション。ここはシートに座ってバンクにぶち当ててみる。凍っていて硬いバンクだったが、グシャっと潰れて失速することもなかった。ただ、シートに座って寝かせると、サスが沈まず腰高なままバイクがバンクして行く感じがする。シート形状のせいで前に座ることができず着座位置が固定されてしまう。普段レーサーに乗っているライダーには、違和感があるかもしれない。見た目張り出しているラジエータシュラウドは、着座位置が固定されるせいか、あまり邪魔にはならなかった

直線コースに出てから改めてポジションを確認してみた。このバイクは座って乗るよりスタンディングの方がしっくり来る。自分の体格だと、変に腰を曲げる必要がないので、ものすごく楽だ。ハンドル位置もやや高めで近い感じがする。いろいろ確認しながら下を見ると、頭の下にフロントフェンダーの先が見えた。バイクの前後がキュット締まったような作りになっている。

再びペースを上げて、登りのS字コーナーの立ち上がりで、加速状態で浮き気味のフロントが、ブルのクローラーの跡を拾って暴れてしまった。YAMAHAの車両としては珍しい挙動。もしかしたら、スパイクタイヤのせいかもしれない。

コース後半は緩いS字の連続で、駐車場エリアへは再び直角ターンで入る。その直角ターン手前のブレーキングで、リアがチャタリングを起こした。先ほどフロントが暴れたときと同じように、ブルのクローラー跡を拾って、硬くグリップの良いスパイクタイヤが跳ねているようだ。やはりレーサーと違って、サスペンションはダンパーの効きが弱い。(レーサーと比べること事態が間違っているが)

その後ちょっと自重して、ゆっくりスタート地点に戻る。


午後から、ノーマルタイヤの車両に乗ってみた。やはりタイヤが滑るせいか、エンジンは元気よく回っていたが、そのほかは、午前中に乗ったスパイクタイヤ仕様とあまり変わらない感じがした。タイヤが滑るにもかかわらず、コーナーでは怖い思いもしなかった

走り終わって感じたことは、これはレーサーではないということ。(当たり前だ)
トレールバイクの割りにはフレームがしっかりしているし、サスペンションもグレードが高い。エンジンも、モトクロッサーのようなつきの良さは無いが、頭打ちしそうでさらにそこから伸びて行く。インジェクションということで、季節ごとに調整しなくてもエンジンはいつも完調だし、保安部品もコンパクトにまとめられていて、弱そうな感じもない。車体はカタログ数値のような重さは感じない。同じ乾燥重量のXR600Rと比べると、天と地の差だ。

ただ難点を言えば、一般人にはシート高が高すぎる、走ると軽く感じるが押したり引いたいするとやはり重たい
あと、装備の内容からすると妥当かもしれないが、多少お値段が高いという点。これは、購入価格が高くても、次の車両に入れ換えるときに、中古市場で捌けることが確実なので、高く下取ってもらえるはずだ。変な中古を集めて直しながら乗るより、ずっとお得だと思う。

バイクの性格からすると、万人には勧められないが、今までのトレールバイクを超越し、環境性能を全うしつつ基本性能が高い。新時代のオフロードバイク。

Kenji Suzuki with WR250R


これを契機に、国内のオフロードバイク界が盛り上がってくれることを祈っております。

関連リンク

WR250R 試乗記
WR250R 試乗記 その2

0 件のコメント: