Road to STDE Vol.7 サバイバル - 泥沼日誌

2007年6月16日

Road to STDE Vol.7 サバイバル

この記事は、『サバイバル2Day'sエンデューロin木古内』への参戦を決めてしまったものの、未知の領域へ踏み込んでしまう不安に嘖まれている初心者ライダーに捧げるものです。


いよいよ来週と迫った、2007年 第22回サバイバル2Day'sエンデューロin木古内 ですが、この私、諸般の事情により出走を取りやめることにしました。エントリーを決断した時点から出走については不透明、一向に事態は好転しないため、出走をあきらめました。既に納めているエントリー費はSTDE復活祝として寄付いたします。

ということで、またまた不戦敗となりました。事前練習で弾けすぎて怪我をされた方もいるようですが、これまでの記事の中で書き残したことをまとめて、校了としたいと思います。


■危険回避

二輪車はライダーが顔を向けた方向に自然と曲がっていく特性があります。ですから、コース上の障害物やカーブの外側に注目してしまうと、ライダーの意思とは関係なくマシンがそちらに行ってしまいます。これを防ぐためには、目線は常に進行方向でなるべく遠くを見る、障害物は早めに確認しいつまでも注視しない、カーブは出口が見えてからアクセル全開、ということを心がけておくといいでしょう。
危険なところも、見えなければ恐怖は感じないのです。

また、レース後半になるとコーナーの入り口付近がブレーキングのために荒れてきます。前の周と同じつもりで突っ込んでいったら、ギャップで跳ねられてコースアウトということもあります。轍もしかり、同じところを百数十台のマシンが繰り返し通ると、だんだん深くなっていきます。
このようなコース状況の変化ということも、心の片隅において走らなければなりません。

自信の無いところでは速度を落として、コース状況を良く見て走るようにすれば、スタックなどで無駄な時間のロスを防ぐことができます。


■川

初心者が一番恐怖を感じる場所は川の走行でしょう。
木古内の川は大きめの砂利と岩盤の路面で、スタックしてしまうような場所はほとんどありません。その代わり川底の石に乗り上げたり、岩盤で滑ったりして転倒する危険性があります。
川渡りで自信が無い人は押して渡るようですが、かえって足を滑らせたり水流に足を捕られたりして転倒することも考えられます。

川の中を走る場合、バイクの中心に乗ってステップにしっかりと足を載せ、バランスに自信がなければ膝でタンクをがっちりと挟んで、駆け足程度の一定の速度を保って走ればなんとかなるものです。

それから、川に関しての地理的な知識も持っている必要があります。(小学校で習ったやつね)
例えば、川が曲がっている場合、川底は外側が深く内側が浅いとか、流れの緩いところには粒子の細かい砂が堆積するとか、流れのきついところを渡るには、斜め下流方向に横切ると水の抵抗が少ないとか、細かいノウハウがあるのですが、この辺は経験で覚えることも多いので、普段から浮き石の上を走ってみるとか、浅い川を見つけて練習してみてください。


■水没

万が一、川で転倒して水没してしまった場合、処理方法を知っていなければどうすることもできないと思います。
簡単にですが、水没からのリカバリー手順を説明します。

もしエンジンがかかっている状態で転倒してしまったら、すぐに止めてください。最悪の場合はシリンダーに水を吸い込んで、ウオーターハンマー現象でコンロッド折損、もしくはシリンダーおよびシリンダーヘッドのボルトが伸びて、エンジン終了となります。

まずバイクを起こして、作業のしやすいところまでバイクを移動します。川の中で作業して部品や工具を落としてしまうと発見は困難です。
バイクを起こしてエアクリーナーの水抜から水が出てこなければ、水を吸い込んでいないこともあります。この場合ゆっくりキックを踏んでみて、クランクが回るようであれば、そのままエンジンがかかるかもしれません。
シートまでどっぷり浸かってしまった場合は、確実に水を吸い込んでいると思われるので、あきらめて水没処理をした方がいいですね。

ガソリンコックをOFFにし、ガソリンタンクを外さない場合はタンクのエアホースを縛ります。WR-Fなどは最初からシートとタンクを外してしまった方が作業性がいいと思います。

プラグを外します。泥が付いていてエンジン内に入り込む危険性がある場合は、バイクを寝かせるか、逆さまにしたときにプラグを外します。外したプラグを見て、水に濡れていなければ水没していないかもしれません。

バイクを逆さまにします。この時に2stの場合はチャンバーがとぐろを巻いている方向に回転、4stの場合はサイレンサー側が下になるように回転します。こうすることでチャンバーやエキパイに入っている水を排出することができます。

念のためメインスイッチのある物はOFFにして、プラグを外してミッションを3速ぐらいに入れて、リヤタイヤを回してあげます。水が入っていれば勢いよく飛び出してくるはずです。1分ぐらい回していれば十分です。
4stの場合はこれで水は抜けるはずです。2stの場合はピストンの裏側に水が溜まることが有るので、バイクを起こした後にキックを勢いよく踏んでクランク室の水を排出します。

実は、GASGASのマシンには水没処理のため(?)に、クランク室にドレンボルトがあるのです。GASGASの場合はバイクを逆さまにしなくても、プラグとクランク室のドレンを外せば、水没処理ができるのです。ただし、立てたままだとサイレンサーとチャンバーに入った水は抜けません。また、クランク室にゴミが入らないように注意する必要があります。水没処理のときに小石が入り込み、クランクがロックした事例もあります。

バイクを起こして、キャブレターのガソリンを全部抜きます。バイクによってはキャブレターにドレンボルトが無い物もあります。この場合、面倒でもフロートチャンバーを外すしか方法はありません。キャブレターを加工してドレンボルトを自作する方もいるようです。

エアクリーナーについては、外してフィルターを搾ると言う人もいるようですが、私はやったことはありません。市販車などで紙のフィルターの場合、濡れると空気の吸い込みが極端に悪くなるので、外して水を切った方がいいかもしれません。

あとは新品プラグに付け替えて、エアフィルター、タンク、シート、燃料ホースなどを元に戻し、エンジンを掛けます。かからない場合は、チョークを引いてみたり、逆にアクセル全開でキックしてみたりしてください。

エンジンが掛かったらいきなりアクセルを煽ったりせずに、最初はアイドリングよりちょっと高いぐらいの回転数でしばらく様子を見て、安定してきたら高回転まで回してみます。
特に2stの場合、水で潤滑油が落とされてしまうため、いきなり高回転で回すとクランクやピストンが焼き付いたりします。

無事水没から復帰してもいきなり全開にせずに、しばらく様子を見ながら走ってください。
水没した場合は、ピットに戻ったときや2日目のスタート前整備のときに、キャブレター内のガソリンを抜くとか、プラグを確認しておくなどのチェックをしておいた方がいいです。

水没処理に関しては、gasgasec250_06さんが詳しく説明してるので、こちらも参考にしておくといいでしょう。


■谷地

谷地とは、河原や常に湿っている場所で、バイクが走行すると底無し沼のようになる場所です。木古内のコースには何ヶ所かこういう場所があります。毎年使われているところなので、場所を覚えてしまえば対処は簡単なのですが、初めて走る人にとっては超難関です。

場所はピットからそう遠くない、川と河原の林間を交互に走る途中にあります。ビデオを見ればわかりますが、山側の木の生えている方は下に根が張っていて、填まると脱出が困難になります。私は何年か前にここに填まり、全く動けなくなったことがあります。3人掛かりでようやく引き上げたら、リアホイールにがっちりと木の根が引っかかっていました。

横にエスケープ路があったり、浅い轍があったりするので、冷静にコースを観察してください。どの轍がいけるかどうかの判断は非常に難しいのですが、行く場合はゆっくりでは無く、進入速度をなるべく高くして、途中で止まらないように一気に通過します。引っかかりそうなら足をついてマシンを引き上げたり、素早く横に降りて押すなりします。

轍を斜めに横切るというテクニックもありますが、全体的に柔らかい場合は横向きに填まってしまい、かえって他のライダーの邪魔になったりすることもあります。

運悪く填まってしまった場合、無駄なあがきをせずに状況を良く観察し、バイクを横に引き抜くとか、少しバックしてから勢いをつけて再チャレンジした方がいいです。
横に降りて押す場合は、バイクの右側に立ってクラッチをつなぎ、リアタイヤが回り出したら左手でリアフェンダーを引っ張り上げ、右手はアクセルコントロールするという方法もあります。

どうしても脱出できないという場合は、フロントフォークとか、フットペグ、ブレーキペダル、スイングアーム、リアブレーキなど、必ず引っかかっているところが有るはずです。バイクを横に振ったり、手で泥をのけたりして見てください。意外とフロントタイヤの前が段差になっていたということも多いです。


■崖落ち

運悪く崖から落ちてしまった場合、同じところから他のライダーが落ちてくることも考えられます。
なるべく早くその場から復帰することを考えた方がいいのですが、しばらく時間がかかりそうなら、落ちたところに戻って、ウエストバックとか、ブレストガードなど、目印になるものを置いておいた方がいいです。他のライダーへの注意喚起にもなりますし、コース上を周回しているマーシャルへのアピールにもなります。
安全上ヘルメットは脱がない方がいいかもしれません。


■救護

もし、他のライダーが負傷しているのを発見した場合、トップ争いをしている場合は別として、一応声を掛けてあげるぐらいの余裕を持って走りたいものです。
状況が深刻な場合は、第一発見者と思う場合はその場に残って、通りがかった他の選手にすぐにスタッフに連絡するように伝えるなどの行動をとった方がいいです。 この辺はルールとしてはっきり決められているものではありませんが、スポーツマンシップに反する行為の上で完走できても、非常に後味が悪いものです。
それから、簡単な救急救護方法についての知識も持っていても損は無いでしょう。


■心得

北海道方式のオープンエンデューロは1周の距離が長く、木古内の場合では1周1~2時間ほどかかります。いったんコースに出たら頼れるのは自分のみ。怪我やマシンが動かなくなってリタイヤする以外は、全て自分でトラブルに対処しなければなりません。
レース中のライダーはテンションが上がっているため、ちょっとのことで誤解を生じたり、思わぬ行動を捕ってしまったりすることもあります。トラブルに対処する前には冷静になって、時計を見てどれぐらいの余裕があるのか確認するぐらいの余裕が欲しいところです。

また、非常に集中力が高く自分が良く走れていると思う場合、意外と怪我をする場合が多いのです。それは、普段走っているいるときよりペースが早くなるためです。
練習でできないことは本番でできるわけはない、というのが私の持論です。


■最後に

オープンエンデューロでそれなりの成績を残すためには、ライディング技術のみならす、知識と経験と適応能力が必要だと思います。それは一朝一夕に獲得できるものではありません。また、レースというフィールドで走ることによって初めて分かることも多々あります。

拙い文章で勝手に持論を展開してきましたが、初めて走る木古内で悔いを残さないために、また、これからのオフロードバイクライフの一助になれば幸いです。

おわり

Road to STDE 木古内への道
Vol.1 まずは申込み
Vol.2 参戦準備
Vol.3 レース前のスケジュール
Vol.4 レース当日
Vol.5 木古内のコース
Vol.6 マシンと装備
Vol.7 サバイバル

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